なぜ！？海保機がフライトレーダーに映らなかった理由

海保機がフライトレーダーに映っていない理由

2024年 1月 2日 17時50分ごろに羽田空港で日本航空JAL エアバス350と海上保安庁の DHC-8 がC滑走路で衝突する事故が発生しました。

日本航空JALの航空機は、新千歳発・羽田行のJAL516便（JA13XJ）、海上保安庁は、羽田航空基地所属みずなぎ（JA722A）

この時間のフライトレーダーをプレイバックするとC滑走路に着離陸する直前の日本航空JALの航空機は映っていますが海上保安庁の航空機は映っていません。

このブログ記事では、海保機がフライトレーダーに映らなかったふたつの理由

について、ざっくりと解説！

フライトレーダーで飛行機が映る仕組みについてちょっと詳しくなれます。
（衝突事故の原因とフライトレーダーに映っていなかったことは関係ありません）

フライトレーダーに映っている航空機は、航空機から発信された信号を地上で受信して現在位置をマッピングしています。

この信号をADS-B（Automatic Dependent Surveillance – Broadcast）といって、航空機がGPSなどの衛星測位システムからの位置情報を地上へ送信することでイマドコにいるのか追跡できます。

フライトレーダーで航空機をタップすると表示されるデータソースが ADS-B になっています。

航空機からADS-Bの信号が発信されないと映りません。

海上保安庁 JA722Aがフライトレーダーに映っていなかった理由のひとつがADS-Bを搭載していなかったことです。

日本ではADS-Bの搭載は義務化はされていませんが旅客機などほとんどの航空機に搭載されています。

フライトレーダーには LADD の対象機は映りません。

海上保安庁 JA722A はLADD の対象機でした。

LADD（Limiting Aircraft Data Displayed）とは、アメリカ連邦航空局（FAA）の仕組みで航空機の表示に制限をかけることです。

任務や用途などの理由から、位置表示を望んでいない航空機はLADDリストに登録すると、フライトレーダーが表示しないようにしています。

全く表示されない機体、
位置は表示されるけどコールサイン・機体番号がN/Aと表示される機体などもあります。

ADS-B Exchange では、LADDの航空機でも表示されます。

海上保安庁 JA722Aを検索すると DB flag が LADD といるのが確認できます。

その他に、フライトレーダーに表示されない理由として軍用機や政府専用機などセキュリティが必要な航空機はブロックされて表示しません。

具体的には VC-25 エアフォーワン、E-4B ナイトウォッチなどの米軍の政府機です。

日本政府専用機は以前は映っていましたが制限の対象で一切表示されません。

さらに、所有者・運航会社からLADDへリクエストできるのでイーロンマスクのプライベートジェットも表示されません。

フライトレーダーに映っていても本当の位置表示でないケースが「推測位置」。到着時間から逆算して目安の位置で表示しています。

航空機からのADS-Bを情報を受信すると高いGPS精度で航空機の現在位置を表示できます。

セキュリティ上の観点などからADS-Bを搭載していても映らない航空機もあります。

海上保安庁 JA722AもMLATで現在位置を追跡することが可能ですが、LADDの対象航空機であったため表示されませんでした。

フライトレーダーに表示していなかった理由や、ADS-Bの非搭載についてなどざっくりと知っておくことでメディアの薄っぺらい情報に惑わされることがなくなります。

フライトレーダーには映っていなくても実際の航空管制では地上・飛行中の航空機・空港車両などを認識しています。